人間は練習すれば想像力を向上させられるのだろうか。一般的な常識では、「練習」と「創造」は結びつかない概念だ。しかし、実は本当にありそうなのだ。
水野学さんという方の「センスは知識からはじまる」という本がある。私の周囲の人は皆読んでいるベストセラーだが、何の知識もなくこの本の題名、「センスは知識からはじまる」を見ると、センスと知識という、一見異なったものがどうして繋がるのか、と思う。しかし、「センスとは知識の集積」であり、「知識というのは紙のようなもので、センスとは絵のようなもの」と言われ、「仕事は価値を創造していくこと」と続けられると、これは、B-TAOの考えと一緒で、これをB-TAO的に言い換えれば、「アイデアは知識の集積」となる。センスとアイデアは見方を変えた同じものである。
スポーツの練習と同じで、アイデアも練習を重ねれば直ぐに腕が上がるというわけではない。ある方向を決めて情報を集め、思考を重ねて行くと、ある時、ポン、と新しい気付きが生まれる。これを「創発」と言う。何時起こるか、どの方向に起こるかは全く分からない(分からないということが立証されている)が、創発は、必ず起こる。つまり、「何をしたらいいか分からない」、「アイデアが湧かない」というのは才能の問題ではなく、単に作業量が不足している、ということなのだ。
しかし、ここで安心してはいけない。やっと浮かんだアイデアが役立つものかというと、残念ながらほとんどの場合、前に誰から考えていたものだったりする。しかしそれでも、自分が一ステップ上がったことは確かだ。そうやって考え続け、アイデアを出し続け、もうこれまで、と思った後に浮かぶのが、真のアイデアだったりする。
そんな辛い思いをして、何になるの?と言われるかも知れない。だが、これこそが楽しいのだ。世に「オタク」と言われる人たち。他人から見れば何故そんなことを、と思われるような分野に熱中している。彼等が人間として本当に幸せな状態なのかもしれない。
B-TAOはオタクになるための道具、なのかも知れない。そう、考えてみればB-TAOのヘビーユーザー、研究者というのは、究極のオタクに他ならない。